ピークへと極まった光のエネルギーは、
やがてはひとりでに収縮していきます。
光が離れていくと、空は高く澄み渡っていきます。
頂上と、谷間と―。
頂上の裏柄にある谷間と、谷間の裏側にある頂上と―。
山の勢いも、谷のくつろぎも。
寄せる波の力も、引く波の脱力も。
満ちていく月の濃密さも、欠けてゆく月の空虚さも。
太陽の光も、空の闇も。
両方が在る事で、お互いが際立ち、
両方が、生きていけるのです。
自然界の時の流れの中で、
あらゆるものがそうであるように、
私達の内にもある、ピークと谷間。
人生の中の、小さな誕生と死の繰り返しの、
その両方のどちらかが欠けても、
私達は豊かさを失うのです。
パビットラ(中沢あつ子)