季節のことば 2008年8月 

ピークへと極まった光のエネルギーは、
やがてはひとりでに収縮していきます。

光が離れていくと、空は高く澄み渡っていきます。

頂上と、谷間と―。
頂上の裏柄にある谷間と、谷間の裏側にある頂上と―。

山の勢いも、谷のくつろぎも。
寄せる波の力も、引く波の脱力も。
満ちていく月の濃密さも、欠けてゆく月の空虚さも。
太陽の光も、空の闇も。
両方が在る事で、お互いが際立ち、
両方が、生きていけるのです。

自然界の時の流れの中で、
あらゆるものがそうであるように、
私達の内にもある、ピークと谷間。
人生の中の、小さな誕生と死の繰り返しの、
その両方のどちらかが欠けても、
私達は豊かさを失うのです。

パビットラ(中沢あつ子)

公開日:2008年8月1日 更新日:2022年5月30日 | カテゴリー :